20130108
「レ・ミゼラブル」を観てきました
小学生の頃なぜか家にあったマンガ版『ああ無情』。幼い私は「本宮ひろ志にしては線の細い絵だな」と思い込んでいましたが、後にその作品は同氏のアシスタント経験のある金井たつお氏によるものだと知りました。ちなみに実家が本屋だったのでなんとなく本宮ひろ志氏の絵柄を知っていただけで、『俺の空』を愛読していた訳ではありません。それはさておき、何故か私はこの本がいたく気に入り、一時期繰り返し読みふけっておりました。愛だの真の人間性だのといった物語のテーマに気付くことはなく、単純にジャン・バルジャンの数奇な人生がおもしろかったのです。まあ、「ジャンバルジャンって、逆から読んでもジャンバルジャン」「銀の燭台が家にあったらかっこいいだろうな」「コゼットのチェックのドレスがかわいいな」「ジャベールはしつこいな」程度のことしか考えていなかったので、読み込んだ割にはあらすじも大雑把なものしか覚えてなかったのですが。
で、昨夜『レ・ミゼラブル』を観てきました。結論を先に言いますと、ぐぐっと来るシーンは数あれど、期待しすぎたかなーという感が。いや、最初の囚人たちの場面ではおおっと引き寄せられ、学生たちの暴動のとこやラストでは熱い涙をこぼしましたよ。それにもちろん作品世界も美術も役者さんたちの演技も歌もどれをとっても大変素晴らしかったです。アン・ハサウェイの熱唱シーンでは“これだけ上手く歌いながら演技もするってすごい!”と心底思いました。
では何が原因かというと、やはり全編歌で物語が進むというのが私には合わなかったようです。ミュージカル映画の大前提を真っ向から否定するこの感想。じゃあ最初から観に行くなよと言われそうですが、『雨に唄えば』や『シカゴ』『ドリームガールズ』などはおもしろかったし、『ロシュフォールの恋人たち』にはかなりはまったので“なんだ私ミュージカル結構いけるかも”と思ってたのです。そういや同じく全編歌の『シェルブールの雨傘』は最後まで起きていられませんでした。
まず1曲が基本的に長く、個人の心情しか歌われないので、全体的に情報量が少なくなり物語にぶつ切り感が生じるように思うのです。たとえば前半の年代が一気に飛ぶのはいいとして、ジャン・バルジャンがコゼットに出会って新しく生きる喜びを見出した旨が歌われていますが、絵としてはたいして二人の生活が描かれていませんよね。これが普通の映画なら台詞なり絵なりで二人の結びつきをもう少し納得させてくれるんだろうな…なんて、ミュージカルを観に行って言う台詞じゃありませんね、すみません。また学生たちによる暴動がじっくり描かれていますがマリウス&仲間たち寄りなため、その分後半微妙にジャン(略)親子の影が薄かったように思います。いや、基本的に成人コゼット(アマンダさん美しかった)、重要登場人物の割にキャラが薄い。マリウスと祖父の関係の変化も唐突に見えました。
とはいえこれは、“ミュージカル『レ・ミゼラブル』”の完全映画化。その辺をうだうだ言うのは野暮ってもんでしょうね。しかしマリウスに思いをよせる娘さんがてっきり意地悪ライバルキャラかと思ったら大変健気でいいこでしたね。関係ないけどウエストのくびれもすごかった。
と、(関係ないことまで)長々と書いてしまいましたが、力強い映画であったことは確かです。
Les Miserables - http://www.lesmiserablesfilm.com/
ここから各国のオフィシャルサイトにリンクしてます。暇だったので見比べました。基本どこも同じデザインなのにフランスやスイスはユニバーサル・ピクチャーズの、チェコは配給会社らしいbontonfilmのサイトの1コンテンツでしかなかったりと独自の見せ方。そして日本だけ何故かメロドラマ感漂うこてこてのビジュアル。「レ・ミゼラブル」のタイトルは台湾語では(中国語も)「悲惨世界」だそうです。